無痛無汗症は、「無汗症を伴う先天性感覚性ニューロパチー」のことで、全身性の痛覚障害、温度覚障害、無汗症及び知能障害が見られる遺伝性の稀な病気です。無痛無汗症の会「トゥモロウ」は1993年設立されました。現在までに約70人が入会していますが、その3倍程度の患者さんが日本にいると言われています。 無痛無汗症は遺伝性末梢神経疾患のうち、遺伝性感覚自律神経性ニューロパチー(HSAN)のW型に相当すると思われます。しかし中枢神経の障害も有しているのが特徴です。無汗症を伴わない無痛症のみはT型と考えられています。 この病気は、発生の過程で末梢神経のうち有髄神経の一番細いAδ線維と無髄(C)線維が欠損ないし減少します。そのため温度覚(熱い、冷たい)と痛覚やかゆみなども障害されます。無髄線維は骨格筋や内臓諸器官の痛みを伝えるため、本症では腹痛なども通常訴えません。 発汗しないのは汗腺をとり囲む毛細血管の機能調節する自律性C線維の欠損ないし減少によると考えられています。さらに、寒くても鳥肌がたたずしかも皮膚血管の収縮も不良で、体温の低下防止ができないと考えられます。 これらの症状も個人差がみられ、一部だけ発汗するなどの例も見られます。 乳児期:無痛状態は新生児期から判断はつくと思われます。 無汗については、哺育器に入った場合は、高体温になりやすいことから、異常が気づかれることがあります。また夏場に体温が上がりやすいことや冬場には低体温になりやすいことから、異常に気づかれることもあります。 また、熱に伴うけいれんがやてんかんが高頻度にみられます。 けいれん重積症や熱中症などに関連した急性脳症のために死亡したり、寝たきりになる例もみられています。乳幼児期に脳症などに遭遇せずその後の感染などに注意すれば生命予後は悪くないと言われています。 歯の萌出時期に舌や指をかんで傷ができます。 またからだがやわらかいことが多く、精神運動発達に遅れが見られることもあります。 幼児期 歩行を開始するようになると骨折、ねんざ、脱臼などを繰り返すことが多くなります。多動がみられることも多く、けがややけどが絶えません。靴や部屋の敷物の工夫、家具やストーブ、ポットなどの置き場所に十分気をつける必要があります。 参考文献 「先天性無痛無汗症〜難病の理解と生活支援のために」
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